「生殺与奪」という言葉

 2年目のA先生との会話で何気なく出てきた「生殺与奪」という言葉。
 A先生が「せいさつよだつ」と言ったので,私はすかさず,
 「あのね,それは『せいさいよだつ』と読むんだよ。」
 と教えてあげた?!
 腑に落ちないA先生は携帯の電子辞書を開き,
 「先生,『せいさいよだつ』では何も出てこないですよ。」
 という。
 え~,そんなはずはない!
 広辞苑で調べればきっとあるはず・・・。
 しかし,その期待は見事に裏切られた。
 ATOK変換でも出てこなかった。
 釈然としない・・・。
 ネットで調べてみたら,次のような記事があった。
 少々長いが,お読みいただきたい。
 ちなみに「相殺」は「そうさい」「そうさつ」どちらもあっ
た。


 政治学のゼミでのこと。
 「生殺与奪の権」という言葉がテキストに出てきた。
 学生はそれを「せいさつよだつ」と読んだので,それは「せい
さいよだつ」と読むのだよと言って修正した。
 いわゆる「ゆとり教育」が本格化する新課程教科書導入より前
の,受験戦争最後の時代を生きた自分をしみじみ感じながら。
 特に誰も気にとめることもなく進めていたところ,一人の学生
がずっと腑に落ちないという顔をしている。
 どうしたのか尋ねると,「先生,これやっぱり『せいさつよだ
つ』じゃないですか」と言い,電子辞書の画面を見せてきた。
 「バカな?!」と画面を食い入るように見ると,「せいさつよだつ」と明記してある。しかもそれのみが。
 「せいさいよだつ」という読みもあり,という表記は無い。
 「それは電子辞書が間違っている。僕は,国語の偏差値は70
だった。英語は最低だったが,大学には国語で合格した。古文と
漢文では失点したこと自体,ほとんど記憶に無い。その僕が「せ
いさいよだつ」と言っている。ぜったいにそれは電子辞書が間違
っている」
 そう断言して,分厚い紙の広辞苑を持ってきて,「まあ見たま
え。僕の正しさは証明されるだろう」と学生の目の前の辞書を開
いたところ,「せいさつよだつ」・・・・・?!としか書いてい
ない。
 気の毒そうに私を見る学生たち。
 「辞書が怪しくなっているというのはよく聞く。考えてみれば
辞書の改訂版の執筆は,そろそろ僕の世代がやり始めている。怪
しくなるのは当然かもしれない」とつぶやいた。
 あるいは,私は気づかないうちにどこかで別の位相に紛れ込んだのだろうか。
 そんなことを今度は非常勤先の法学部の講義で雑談で話したと
ころ,講義終了後学生がやってきて,こういう。
 「僕の父親は,司法書士ですが,父は『せいさいよだつ』と読
んでいました。民法で習う『相殺』は,まだ法学部では『そうさい』と読んでますよね。これも,そのうち,『そうさつ』と読むようになるのではないかと言っていました」
 そうなるかもしれない。新しい法律ほど口語で条文が長くなっている。一つの言葉は一通りでしか読まないというのは,大衆化の現象としてもよく分かる。
 「『せいさいよだつ』の方が,絶対カッコイイですよ。『セイ
サツヨダツ』は,『ツ』が二つ重なって下品です」
 「だよね!『せいさいよだつ』と読むのが,日本語の発音の美
しさだよね。あなたもそう思うでしょ」
 「はい,僕はこれからも,『相殺』は「そうさい」と読みま
す。これからは「せいさいよだつ」も貫きます」
 と無駄に熱い会話と同盟が結ばれる。

 他にも,父と息子の会話 
  http://wild-cat.seesaa.net/article/225112649.html
もおもしろい。

 余談:「すごいね,よく知っているねえ!」とA先生をほめた    ところ,よく読む漫画で覚えたという。
漫画の力は偉大!

ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!

ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。

→ログインへ

なるほど(納得、参考になった、ヘー)
驚いた
面白い
ナイス
ガッツ(がんばれ!)
かわいい

気持玉数 : 4

なるほど(納得、参考になった、ヘー)
面白い 面白い
ナイス

この記事へのコメント

「せいさ『い』よだつ」は間違いです。
2016年12月12日 23:48
こんにちは。
「生殺与奪」で上位に、「せいさいよだつ」で最上位になるこちらのブログにコメントさせていただきます。

「生殺与奪」の読み方は、「せいさつよだつ」が正しいです。

本文では「電子辞書では」「最近は」せいさつよだつという読みになっている、とおっしゃっていますが、そもそも「殺」を「さい」と読むときには「へらす・けずる」の意味なので、「生かすも殺すも」という意味で「せいさい」とよむことはありえません。

なお、近代最初の国語辞典『言海』をはじめ、『日本大辞書』などの明治期の辞書、及び広辞苑や新明解などの現代の「紙の辞書」でも、私が確認した限りでは「せいさつ」という読みです。

「江戸時代は『せいさい』と読んでいた」とおっしゃるならばそれまでですが、少なくとも近代以降で「せいさい」を正しい読みとした史料はありませんでした。

なお余談ですが、「お互いに殺し合う」時は「そうさつ」と読みます。債権をお互いに「けずる」ので「そうさい」になるわけです。
設置者
2016年12月13日 14:11
ご指摘ありがとうございます。
そうなんですね。
勉強になりました。
ありがとうございました。
お返事ありがとうございました。
2016年12月13日 23:57
安易に検索をして出てきた結果を鵜呑みにしてテストで×をもらううちの生徒たちのような被害者を出さないためにも、記事の訂正もしていただけると幸いです。

「教師は非常識w四字熟語も読めないwwwww」などと煽られるのは同業者として耐えられません。
生徒
2017年06月09日 22:53
ホント教師って自分が全て正しいんだみたいな人格障害者が多いよな
設置者
2017年06月09日 23:02
確かに世間が狭いと思います。
井の中の蛙にならないよう,自己自立が必要です。
ご指摘ありがとうございます。
通りすがり
2019年04月08日 17:13
私も「せいさいよだつ」と覚えていました。「せいさつ」ではなく「せいさい」とは不思議だな、と覚えていたのです。それも結構の数の人が私と同じことを仰る。何か史料はないんですかね?
設置者
2019年04月08日 19:34
私も「せいさい」だとばかり思っていました。
コメントをくださった方々に教えられたような次第です。
いろいろ検索しましたが,よくわかりませんでした。
コメントくださりありがとうございます。
コンパイル大好きっ子
2020年02月06日 09:36
おじゃまぷよを削るから「そうさい」なんですね
2020年02月07日 18:17
新書を読んでいたところ、生殺与奪に"せいさつよだつ"とルビがふられていました。"せいさいよだつ"で記憶していたので驚きました。言葉は生き物ということですね。

"せいさいよだつ"では漢字変換できないので、今後ますます、"せいさつよだつ"が読み方として定着しそうですね。
設置者
2020年02月07日 21:29
コメントありがとうございます。
わたしもずっと「せいさいよだつ」と覚えていました。
せいさいよだつ と入力しても変換されないですね。
これには驚きました。
ご意見、ありがとうございました。
なんだかね
2020年05月20日 03:50
白黒つけたがる揚げ足取りってどこでもいるよね。
相手に伝わってればどっちだっていいじゃん。
言葉って時代で変化するものだし、そもそも意思の疎通のために言葉があるのであって、すでに正しい正しくないと議論している時点で、単語意味に共通認識あるじゃない。
設置者
2020年05月20日 07:44
コメントありがとうございます。
言葉は世につれ・・・・?
私たち高齢者からすると妙な日本語がまかり通っている現代。
例 「全然大丈夫」
目くじら立てて指摘しても致し方ない・・・・?
通りすがり
2020年07月29日 18:45
過去のエントリーにコメント失礼いたします。

自分も「せいさいよだつ」と覚えていました。
でも、日本語入力で変換できないことにショックを受け、
言葉尻が気になる性質なのでどなたかと同じように調べてみましたが、やはりよくわからずでモヤモヤ。
結局、言葉は生きている、時代とともに変化するんだ――と、
アタマの固い頑固者にはなりたくなくて納得することにしましたが同じように思っている方が一定数いるようだと安心した次第です。
でも、「せいさいよだつのほうがカッコイイ!には激しく同意です。

大人気のアニメ『鬼滅の刃』の中で "せいさつよだつ” と言っているのでこれが定着するのでしょうね。


2020年08月10日 05:39
誰が変えるんだ?文化庁が呼んだ自称識者か?かってにやるからこういう問題が起きる。なんのために日本語を完璧にしてきたのか?せめて両方を併記しなければいけない。真面目に勉強したものが馬鹿を見て、馬鹿が伝わればどちらでもいいだろとか声を大にする世の中になる。
設置者
2020年08月10日 07:48
日本語は世の中の動きにつれて変わっていく、という方がおられます。代表的な例が「ぜんぜん」です。
「ぜんぜんおいしい」とか。
私はこういう考えには反対です。
正しい日本語を伝えていくべきだと考えます。
生殺与奪もしかりです。
ちなみに私のパソコンでは「せいさいよだつ」と入力すると、「制裁与奪」と変換されます。

この記事へのトラックバック